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天下一舞踏会 決勝戦Ⅱ

  : 

今日も生と死の間に、揺れてます。

20171231 withKと樹海 

ついにやりました!(゜∀゜)

ソリティアコンプ

去年から始めたWindws10のソリティアコレクション、年間コンプリート達成!ヽ(´▽`)/
何の楽しみもないこの人生に、達成感を与えてくれる数少ないコンテンツ。
正直、難解な場面もありました。投げ出しそうなほど、ため込んだ時もありました。
ただ去年よりも難易度は明らかに下がってました。
私と同じような暇な方は、きっと何人もコンプしてることでしょう。

よいお年を/~~


「ただ歩いているだけなのに、この充実感はなんだろうか。」
おそらく2時間は歩いたKは、そんな感覚になっていた。これから何も進まない人生。人生を止めるためだけにKは歩き続けた。
樹海では様々な怪奇現象が報告されているが、今のところKの身の回りには起きていなかった。
なんだろう。夜中にこんなところをさまよい続けたらおかしくなりそうと、Kは考えていた。しかし今のところ、Kは車から降りた時と同じ精神状態を保っていたことに違和感を感じていた。
「やはり何か持ってくるべきだったのか。」
手っ取り早く自殺できる道具を持ってこなかったことを、Kは初めて悔やんだ。
「俺はこんなところまで来ても、まともに役目を果たせないのか。」
Kは世間にいたときのように自暴自棄になって、地面に座り込んだ。
最初は胡坐をかいたが、どっと出た疲れがKを大の字に寝そべらせた。豊かな土と落ち葉が絨毯変わりとなってか、意外なほど寝心地がよかった。
「このまま一晩たてば、この世とはおさらばだろう。」
そう思いながらKは、うつろな目で、木の葉で真っ黒になった天を見上げた。
すると自分の真上に、枝とは違う何かがゆらゆらと揺れているのに、Kは気づいた。その揺れている何かは、かなりの重量感を持っていた。
「もしや…」
Kは飛び起きた。少し離れてそのシルエットを確認した。やはりそれは、首を吊った人間だった。
樹海での事象の報告をようやく目の当たりにできたKは、少しほっとした。Kの頭上にあるのが、おそらく死体であるにも関わらず、Kは何となく安堵した。時間の長短はあれど、思った通りに自分もああなれるだろう、と。
Kはそれが「首を吊った人間」であることがわかる角度に位置取った。その場所にしゃがんでは、膝を抱えて座り込み、その死体らしきものを眺め続けた。こんな場所には、よく異形のものが目にされるなんて話を聞くが、死体という現実のもの以外、Kの目に触れることはなかった。
風もないのに揺れている死体。おそらくロープのねじれが作用しているのだろうか。そのわずかな死体の動きを、Kは神秘的に感じながら見続けていた。

次にKが気が付いたら、すっかり明るくなっていた。場所が場所なだけに、Kはものすごく空気が美味いと思った。頭上には、例の首吊りの死体がぶら下がったままだった。死体は男性だった。
死体はそんなに時間がたっていないようで、衣服は整っていた。真っ黒と言っていいほどにどす黒くなっていた死体の表情は、苦悶に満ちていた。世間ではこんな表情をする人間を見たことがないし、おそらくできないだろうと、Kは直感的に思った。そして今世最後にいいものを見た、これを見られただけでも、今まで生きてきた甲斐があったと、心から思った。Kは、お通夜に行ったことは何度もあったが、こんな表情をした遺体があったとしても、そのまま棺桶に安置して見せることはないだろうと。
昨晩同様に死体を眺めていると、ふと我に返った。一晩無防備に眠り呆けて、よく無事でいられたなと。
怪奇現象もなければ、獣に噛みつかれることもなかった。
昨晩感じていた「樹海が自分を受け入れてくれた」感覚は、自分を"そっちの世界"に連れて行ってくれるのではなかったのかと、Kは憤慨に近い疑問に陥った。
夜よりは少し、風が吹いてきた。頭上の首吊りの死体は苦悶の表情を浮かべながら、身体を裏表させながら揺れ出した。
Kは戻ろうと思った。どうもこのままここにいても、空腹で倒れてしまうだけだ。そう予想すると、そういう辛い思いはしたくない。もし戻れなくても、樹海から出られなくても、それはそれでいいのだから。もし樹海から出られたとしたら、やはりここに来るべき存在ではなかったのだと、あきらめがつく。そう思ってKは、なんとなく元来た方角に向かって歩き始めた。
4時間は歩いたのだろうか。Kはなんと、樹海の外に出ることができた。しかも、元来た駐車場にたどり着いた。もちろんKの車は、もと止めた場所にそのまま駐車されていた。すでに昼下がり。Kが来た時と違ったのは、駐車場が混んでいたことだけだった。
Kは自分の車に乗り込んだ。がっかりしたような、ほっとしたような、複雑な心境だった。
Kは車にエンジンをかけて、家の方角に走り出した。

Kに起きたことは、K以外に誰も知られていない。これからも自分が話をしない限り、誰も知りえない事実である。外傷もなければ、衣服のほころびすらなかった。泥のついたシャツとスラックスは、洗ってしまえば元の白いシャツに戻ってしまう。
Kは街中まで出てきた。見慣れた街並みにほっとしたのか、Kは急に空腹を思い出した。
幸い今走行しているのは、相互3車線の大通り。すぐにファミレスの看板が目に入り、Kはそこで食事をすることにした。
シャツのまま店に入ってもおそらく問題無かったろうが、Kはシャツの汚れを気にして、後部座席の背広を着た。
「いらっしゃいませー!」
Kが店内に入るとすぐに女性店員が駆け寄り、Kをテーブルまで案内してくれた。
「やっぱり俺は、こんな生活を続けるしかないのか…」
Kはテーブルに備え付けのメニューを眺めながら、これからまた始まろうとしている日常を恨めしく思った。
「いらっしゃいませ。」
先ほどテーブルまで案内してくれた、かわいらしい女性店員がKに笑顔を見せ、水を差しだした。営業スマイルとはいえ、接客の良い女性店員の応対に気をよくした。
そう思った刹那、女性店員の行動に驚愕した。
女性店員はKに見せた笑顔を、誰もいないはずのKの向かい側の席に向けた。そして同じように、持ってきた水を差しだしたのだ。
「メニューが決まりましたら、ボタンでお知らせください。」
そう言って奥に戻っていった女性店員を、Kは茫然と眺めていた。
恐る恐る正面に向き直ったが、やはりKの前には誰もいない。程よく結露し、冷たさの伝わるグラスだけが置いてあった。
「ああ、多少は変わるのか。」
Kはぼそりと独り言を言ったが、誰も答えてはくれなかった。


(おしまい)


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